選んだ愛に責任を持つ
これまで多くのさまざまな人生にふれてきました。
今回はとても印象に残っている女性のお話です。
旦那さんとは20歳近く年が離れていました。
彼女は彼の勤める会社に新入社員として入ったのだそうです。
その頃、彼は40になろうとしていました。
彼には、育ち盛りの子ども4人と専業主婦の奥さんがいました。
奥さんは子育てでいっぱいいっぱい、精神的にもかなり追い詰められていたようです。
彼も休みの日は子どもの面倒を見たり家事をしたりしていたんだそうです。
しかし、中堅ポストにいた彼は、平日は残業が多く、なかなか奥さんをケアできなかったようです。
ところが、彼の奥さんは、彼の帰りが遅いのは浮気しているからだと思いこみました。
そして異常に彼を責めるようになったんです。
奥さんは被害妄想がひどくなり、日常生活にも支障をきたし育児も出来なくなりました。
その後、彼は4人の子供を引き取り離婚しました。
育ち盛りの子ども4人の世話は普段はなんとかなったようですが、長期休みとなると、彼の年老いた両親だけでは回らず、時には、彼の部下たち皆でバーベキューパーティーやらキャンプやらに誘い、シングルファザーになった上司に協力したんだそうです。
そんなとき、子ども好きな彼女は一番下の子の遊び相手になり、まだ幼いその子は彼女によくなついたんだそうです。彼女は、自分を母親のように慕ってくる一番下の子が不憫でならなかったそうです。
彼のことは、初めは上司としてとても尊敬していましたが、仕事も育児も精一杯の彼を見ているうちに、尊敬とは別の感情が湧き出てきたんだそうです。
そして、ついに彼女は、彼のそばに行って子供たちの母親代わりになることを決心しました。
当時、一番上の子が小学校高学年、一番下の子が4歳だったそうです。もちろん周囲は猛反対でした。
彼女の親御さんは「なんで家政婦みたいなことをしに行くのか」と怒り心頭だったそうです。
彼女は、親子の縁を切る覚悟で家を出、彼のところに行きました。
その後、ふたりの間にも子どもが生まれ、彼女は5人の子どもを育てました。
私が彼女と会った時は、彼女の夫はもう若くなく、一家の生活は彼女にかかっていたんです。
一番下の子が高校入学ということで、彼女は仕事を増やそうか転職しようか悩んでいました。
そのときの彼女は、髪もかまわず化粧っけもありませんでした。
もっと違う人生もあったんじゃないか?と思った私は
「大変だね」と言いました。
すると彼女はしっかりとした口調で言いました。
「自分でこの人生を選んだから、子どもたちを一人前にするまで頑張りたいんです。」
「選んだ人生に納得する、選んだ愛に責任をもつ」
どのような人生であっても、誰のせいでもない
自分が選んだ人生であるということ
だから、その選択に自信と責任を持って生き抜くのだ
彼女の短い言葉から、そんな強い覚悟を感じました。